本プロジェクトでは、拡張セントラルドグマの基礎を確立するため、3つの目標を立てています。
- 目標1:情報基盤の確立
- 目標2:技術・設備基盤の確立
- 目標3:連携基盤の確立
目標1情報基盤の確立
1つ目の目標の達成のために、以下の4つの柱を立てて研究を進めています。
- ヒトの持つ糖鎖構造の全体像の把握(セグメント1:ヒト糖鎖精密地図)
- 糖鎖と病気の関係性の解明(セグメント2:ヒト疾患関連糖鎖カタログ)
- 糖鎖が作られる仕組みの解明(セグメント3:糖鎖生合成アトラス)
- 糖鎖情報を利用する基盤の確立(セグメント4:糖鎖ナレッジベースTOHSA)

ヒト糖鎖精密地図

質量分析器を用いた最新の糖鎖構造解析技術で、ヒトの身体の中に存在する糖鎖の正確な構造を網羅的に明らかにしていきます。

糖鎖は、タンパク質や脂質に結合した形で存在しています。
「ヒト糖鎖精密地図」では、どのタンパク質の、どの部位に、どんな形の糖鎖がついているか、詳細な情報を得ていきます。
ヒト糖鎖精密地図を作ることで、ヒトが疾患になったとき、健康なときと比べてどの糖鎖がどのように変わったのか、わかるようになります。
本プロジェクトでは、糖鎖の構造を解析するための世界標準法の基盤を確立します
疾患関連糖鎖カタログ
どの糖鎖が、どんな時に、どのように変わるのか。
多くの血液中の糖鎖を調べて、身体の変化、病気と糖鎖の関係を解明していきます。


(疾患糖鎖カタログのイメージ)
血液中の膨大な糖鎖構造を解析します。一つ一つの点は違う形の糖鎖を表します。病気になると、特定の糖鎖が減少したり、増加したり、様々な変化が起きることが予想されます。
現在、がんの診断で用いられるバイオマーカーの多くは、糖鎖の変化を検出しています。つまり、病気になると体の中の一部の糖鎖の構造が変わります。ときにそれが病気の悪化の原因となることもあります。つまり「糖鎖の変化」は診断や治療に役立てることができます。
本プロジェクトでは、「ヒト糖鎖精密地図」を元に、認知症をはじめとする様々な病気の患者の血液の中の糖鎖の変化を網羅的に調べます。最先端の機器と方法を用いて、血液中に含まれる膨大な数の糖鎖の構造を調べ、どの糖鎖が、どの病気でどう変化するのかを明らかにします。
また、多くの方の糖鎖の構造を迅速に調べるため、本プロジェクトでは、分析工程を自動化する設備の構築も目指しています(目標2)。
糖鎖生合成アトラス
さまざまな構造の糖鎖がどのようにできるのか。
細胞の中で糖鎖がつくられるしくみを明らかにします。


細胞の中で糖鎖が酵素によって順次作られていく模式図
それぞれの病気において、糖鎖の構造の変化はどのように起こるのでしょうか?
それがわかれば、糖鎖の変化を抑えることで、病気を治すことも可能になるかもしれません。
糖鎖は、細胞の中の酵素の働きによって作られます。糖鎖を作る酵素(糖転移酵素と呼ばれています)の多くは、細胞内のゴルジ体と呼ばれる場所に存在します。しかし、ゴルジ体の中のさらに細かい場所や、それぞれの酵素がどれほどの活性を持っているかなど、詳細はまだ解明されていません。
本プロジェクトでは、ヒトの全ての糖転移酵素について、細胞内で存在する場所や活性の詳細を明らかにします。
糖鎖が作られるしくみを解明し、特定の糖鎖を改変する技術の開発へつなげます。
糖鎖ナレッジベース:TOHSAの構築
ヒトの糖鎖の情報を網羅的に収載したナレッジベース「TOHSA」を構築します。これにより、世界中の人が糖鎖の情報を利用できるようになります。

ナレッジベースとは、データと知識を蓄積・融合して活用しやすくしたシステムです。
「TOHSA」は、ヒトの身体に存在する糖鎖の構造、病気と糖鎖の関係、糖鎖が細胞内で作られるしくみ、これらの糖鎖に関する情報を網羅的に収載したものです。そしてその糖鎖の情報は公開され、世界中の人が使えるようになります
糖鎖の情報は、研究・医療分野に広く応用され、生命のしくみの真の理解と革新的治療・予防法の開発へと活用されていきます。
目標2技術・設備基盤の確立
糖鎖の解析は、複雑なステップが数多く存在します。多くのサンプルの糖鎖を迅速かつ正確に行うために、本プロジェクトでは、工程を自動化した革新的な設備を開発します。

複雑な糖鎖抽出過程を
正確に・安全に・スピーディー
にする世界初の自動装置
糖鎖の構造は、質量分析器により得られたデータを解析することで決定します。本プロジェクトでは、質量分析のデータから、タンパク質のどの場所にどのような糖鎖がついているのかを正確に決めるためのソフトウェア等を開発し、世界標準法の基盤を確立します。

複雑な糖鎖構造を読み解く
新たな糖鎖解析ツール
目標3連携基盤の確立

本プロジェクトは、2022年度より開始している共同利用・共同研究拠点「糖鎖生命科学連携ネットワーク型拠点(J-GlycoNet)」と連携して活動を展開しています。J-GlycoNetには、日本全国の糖鎖研究者がCollaborative Fellow(コラボレイティブフェロー)として参画しており、オールジャパンの体制で国内外の糖鎖共同研究を推進しています。
HGAでは、J-GlycoNetをプラットフォームとして、糖鎖ナレッジベースTOHSAの国内外の共同利用を推進するとともに、TOHSAを基盤とする融合研究を推進するためのオープンミックスラボを整備し、国際的な異分野融合を推進します。
異分野融合研究により、糖鎖の構造情報の医療応用や、糖鎖生合成アトラスを利用した糖鎖改変細胞(糖鎖ネオ細胞)の創出などを目指します。
世界レベルの糖鎖統合研究
ネットワーク
糖鎖が担う
生命原理の解明
(拡張セントラルドグマへ)
国際連携基盤
